耳鳴り・突発性難聴について
耳鳴とは、周囲に実際に音が存在していないにもかかわらず、何かしらの音やノイズが聞こえる自覚症状のことを指します。そのメカニズムとしては、音が伝わる経路(外耳・中耳・内耳、さらには聴神経や脳)のいずれかに何らかの異常が生じている可能性があると考えられています。
一方、突発性難聴は感音神経性難聴の一種であり、突然片側の聴力が著しく低下してしまう疾患です。一般的には40歳代から50歳代の成人に多く見られますが、近年では若年層でも発症者が増加しています。この病気の前兆として、耳の閉塞感や耳鳴、めまいなどの症状が現れることがあります。
突発性難聴は、症状が現れた早期からの治療が非常に重要であり、治療開始が早いほど完治または改善の可能性が高まります。なるべく早くに適切な対応を行うことが推奨されています。
耳鳴りと突発性難聴の主な原因
耳鳴りは、聴力低下を伴う場合と聴覚機能に異常がない場合とに大別されます。それぞれに関連する疾患や要因は多岐にわたります。
【聴力低下を伴う耳鳴りの代表的な原因】
- 内耳炎:鼓膜より内側に位置する内耳に炎症が生じることで、難聴やめまい、耳鳴りなどの症状が現れます。
- メニエール病:内リンパ水腫と呼ばれる内耳の液体バランス障害により、反復する回転性めまい、低音域を中心とした感音性難聴、耳鳴りなどが特徴です。
- 突発性感音神経性難聴(SSNHL):原因不明の片側性の急激な難聴であり、耳鳴りが初期症状として現れることも多くあります。
- 老年性難聴(加齢性難聴):加齢に伴う内耳や聴神経の機能低下によって、徐々に聴力が低下し、耳鳴りが生じることがあります。
【聴力低下を伴わない耳鳴りのよくある要因】
- 心身のストレス・疲労:精神的または肉体的な過労が自律神経系に影響を与えることで、耳鳴りを引き起こすことがあります。
- 睡眠障害・不眠:不十分な睡眠は、中枢神経系に影響を与え、耳鳴りを悪化させる因子となる可能性があります。
- 循環器系の全身疾患:高血圧、貧血、甲状腺機能異常、糖尿病などの全身疾患が、耳鳴りの一因となることがあります。
- 精神疾患との関連:不安障害、うつ病、パニック障害などの精神的な疾患と耳鳴りは密接に関係しており、相互に影響を及ぼします。
- ホルモンバランスの変動:更年期や月経周期などによる女性ホルモンの変動も、耳鳴りの誘因となることがあります。
耳鳴りは、多くの場合、聴覚系の異常を反映しているサインであり、特に突発性難聴などの重篤な疾患の前兆として出現することもあるため、早期の専門医療機関への受診が推奨されます。
耳鳴り・突発性難聴の治療例
- 耳周囲や頭面部に関連するツボ (例:聴宮、翳風、太陽など)への鍼刺激により、局所の血流改善や自律神経調整を目指します。
- 前腕や肘部の特定のツボ (例:曲池、合谷など)に対しても鍼や温灸が施されることがあります。
これらの治療法は、患者の全身状態の改善やストレス軽減を通じて、耳鳴りや難聴の症状緩和に寄与する可能性があると考えられています。
耳鳴りや突発性難聴に対しては、現代医学に基づく標準的治療を第一選択としつつ、必要に応じて東洋医学的アプローチを補完的に用いることで、より効果的な症状管理を目指すことが望ましいと考えております。