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人間の疲れとは何か:その心理学的考察

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始めに

疲れとは何かは、私のメインテーマです。痛みと発熱と疲労は三大アラームと定義づけされています。疲れたことが無い人はいないのに、そのメカニズムはよくわかっていない。体が脳に送っている疲労という危険信号のメカニズムはよくわかっていないと考えます。
私が疲労とは何かを深追いする理由は多くの病気の遠因が疲労だと考えているからです。

この文献では、疲労とは何かについて心理学の視点から論じています。正直、周りっくどい説明も多々あるが、なるほどと思うところも多々あり共有します。

要約

この論文は労働環境を良くするためにはどうすればいいかが前提で書かれているため、働く人間の疲れとは何なのかについてフォーカスしています。従来の調査研究では、短い期間での身体の測定や評価が重視されていたため、現実に即していないので心理学的にアプローチしています。研究をするためには客観的なデータ分析をする必要があるから、仕方ないことだと思うけれど、サンプルのとり方が偏っているのは事実だと私も考えます。実際何十年も働くわけですから。
以下はザックリな私の理解です。
人間の活動は社会とつながることだと定義されている。そこが面白い。仕事の場合は社会貢献だし、家庭なの場合は家族サービスになるかと。こうしたいというのがあって、そのためにはこれをするってのがあって、そこがチグハグになること疲れる(疲労)としています。肝となる部分は以下のとおりです。

「人間が活動を遂行する過程で,これら3つの心理学的単位間の相互関係に齟齬が生じることがある。例えば,活動と行為との関係では,ある行為を行っているがそれが活動の目標を充足しない場合がある。つまり,行っていることまたは行わなければならないことと,前もって決定した行いたいこととが違っているということである。また行為と操作との関係では,行為の意図的側面と操作的側面とが離反することがある。実際に行うべきまたは行った一連の操作が,行為の現在の意図に合わないということである。これらの状況が一定時間持続する,またはその種の出来事が頻発すると,活動の主体である人間には既定の目的を達成できない,さらには期待する活動の目標が充足されないという意識が表れる。その結果,行っている活動へのモティベーションの減退が起こる。それが“疲れ”である。」

「モティベーションの減退」が起こらなくても疲労はするとは思うし、社会に無関心な人だって疲労はするから、ちょっと偏っているとはおもうけれど、確かに一理あるかと思います。ここで言う「活動」と「行為」と「操作」の定義は本文を見て欲しいのだが、「目標のために頑張ったのにうまく行かないことってよくあるよね」という理解でいいかと思います。それを前提に疲労の特徴を挙げている。

疲れの心理的特徴について

  1. 疲れは自覚される
  2. 疲れは抑制されうる 
  3. 活動の疲れは別の活動への動機を生む 
  4. 活動を行うことによって前の活動による疲れは低減・消去される  
  5. 疲れは感情を伴うことがある   
  6. 疲れは体験される自己評価である  
  7. 疲れは人間を活動主体から個人に変える

このように理解することで疲労とは何かの理解について解像度が上がるので、有効な調査ができると書いています。
私が個人的に面白いと思ったのは、「疲れは体験される自己評価である」と「疲れは人間を活動主体から個人に変える」の二つです。自分以外の誰かのために何かをしたから疲れて、休むことで自分自身に戻るを繰り返していると言っていると理解しています。疲れることは必ずしも悪いことじゃないし、休むことも悪いことじゃないと言っているように思いました。

最後に

疲れと上手に付き合うことって難しいけれど、その理由はそもそも疲れとは何かについて言語化出来ていないからだと思いました。そのくらい疲れるってありふれたことだと思います。ただ、疲れることで病気になっている人が沢山いるのも事実です。だから、労働科学といつもと違った視点からの研究は、医療従事者として勉強になりました。是非読んでみてください。内容について質問等あれば、LINEで連絡ください。

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