慢性腰痛の新たな治療戦略
今日の参考文献はこちらです
初めに
鍼灸治療を選択する方の多くは、慢性疾患です。慢性疾患が急性疾患の延長に捉えている方が多いと思います。この文献では慢性的な腰痛に対してどのようにアプローチするかが書いてあります。
要約
この文献では慢性腰痛に対して生物心理社会モデルの理解が推奨されています。生物心理社会モデルとは何か?これについては生物医学と対比することで説明する必要があると思います。ザックリな説明になりますが、体に何らかの原因等(例えばヘルニア)があって、それを取り除いたら改善されるのが生物医学モデル。原因が複数あって原因同士が作用しあうのが生物心理社会モデルにという理解でいいと思います。急性腰痛は生物医学モデル、慢性腰痛は生物医学社会モデルという分類でもいいかと思います。
腰痛は人類が二足歩行を始めた故に避けれないという説もあります。実際、大半の人間は腰痛を経験しています(そんな私も今朝からぎっくり腰です。)。この文書では慢性腰痛に対して画像所見と症状が一致しないこと、海外では(慢性腰痛に対して)画像診断を推奨しないこと、腰痛の発症または増悪と画像所見上での進行度合いが関連ないことなど指摘されています。さらに、このことを患者さんにちゃんと伝えること(このように正しい知識を患者さんに伝えることを患者教育と呼ぶ)で短期的・長期的・再発率で有効と書かれてあります。
更に、慢性腰痛に対して認知的側面(慢性腰痛に対する正しい知識)、機能的側面(動作改善を目的にした指導)、生活習慣的側面(日常生活に対する助言)からアプローチすること(これをCognitive Functional Therapyと呼ぶ)で症状が改善されただけでなく、患者さん本人が疼痛管理ができる(医療費の削減につながる)、そのような内容になっています。多面的な介入が今後のスタンダードになるだろうと締めくくっています
私なりの意見
個人的には、この文献の肝は「患者教育によって患者さん自身が主体性を持つこと」だと思います。そのためには対話は前提だと考えます。
しかし、実際の現場においてこれは難しいです。そもそも、腰が痛くて鍼灸院に来たのに、腰痛以外の例えば生活習慣まで聞かれたら、特に女性なら警戒しますよね。しかし、例えば立ち仕事が多い主婦なのか、デスクワークが多いOLさんなのかで、生活習慣が違うのは事実です。私は、鍼灸師を改善をプレゼントしてくれる人ではなく、一緒に治していく仲間だと思ってもらいたいです。文献の途中で画像診断について「中途半端な情報は患者の改善の妨げになる」といった風の内容の部分があり、ちょっと複雑でした。ただ、画像情報に限らず、中途半端な知識で患者さんが思考が迷宮入りしているのを見るのは珍しくありません(これは本当に多い)。私は、患者さんが現在地を理解して進む方向を共有することで、ゆっくりと治っていくことを知ってもらいたいです。
アルベルト・アインシュタイン
「対話は誤解を解く鍵である。」