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最新おからだ治療院

慢性疼痛の脳内メカニズム

初めに

この文献では、痛みの慢性化は脳の機能不全としています。具体例として、

  • 脳報酬系の機能不全
  • 下行性疼痛抑制系の機能不全
  • 運動恐怖に基づく不適応
  • 脳内身体地図の変容
  • 感覚−運動ループの破綻

について書かれている。
痛みは感覚野以外にも伝達されるため、感覚以外の要素も含められていることが指摘されている。

脳報酬系システムの機能不全


脳の報酬系とは中脳ドーパミン細胞が活性化しない様子のこと。本来は報酬が予測されるとドーパミンが分泌され側坐核が興奮する。実験的に痛みを減らすと報酬を得た時と同じようにドーパミンが分泌されるが慢性疼痛患者は分泌されない。慢性疼痛患者は報酬に基づく意思決定に問題があるとのこと。
他に長期的な報酬価値を判断する内側前頭前野の機能低下も指摘されている。内側前頭前野と側坐核脳連結異常が慢性化を招く可能性があり、痛みをどのように捉えるかのリハビリが効果的と言われている。

下行性疼痛抑制の機能不全


前頭前野は下行性疼痛抑制に関与しているが、慢性疼痛患者は機能不全が指摘されている。痛みについての正しい理解や認知ができずに痛みの、制御機能が破綻している。そのためには患者教育が有効とされている。

運動恐怖に基づく不適応


慢性疼痛患者は前頭前野以外の変容も報告されている。これらは情動に関与している。複合生局所疼痛症候群では運動恐怖と機能障害の予後について報告されている。痛みの強さより運動恐怖と相関関係があるとのこと。過度の痛み回避は不活動になり慢性化しやすい。扁桃体の過活動は前頭前野の活動低下を招くので悪循環が起きる。

脳内地図の変容と不使用の学習


体を動かした時に痛みが強いと、自然と動かさなくなる。それが続くとその部分の脳が変化する。活動が低下すると、下行性疼痛抑制に影響が出るので、動かす方がいい。

感覚−運動ループの破綻


複合生局所疼痛症候群の患者は脳の感覚野が本来と変わってしまうことが指摘されている。治療によって痛みが除去された際に本来の感覚野から離れて再生されると予後が悪いとされている。

私なりの感想


痛みは感覚の問題だけじゃないことが説明されていて興味深かった。扁桃体が過活動すると前頭前野が働かなくなる点は、痛みに関係ないところで知ってていい話だと思いました。怖いと何も考えられなくなる。トラウマの原型を見た気がしました。
この文献では複合生局所疼痛症候群について触れていたが、慢性化した痛みに共通していると理解しています。報酬系の機能不全について、脳の細胞レベルで希望を失ってしまったと理解しています。この辺り、今後もアップデートしていきます。乱暴な表現になるけれど、痛みが続くと脳の形が変わるという理解でいます。脳の形が変わるまで無理をしないこと、元の形になるのを周りが邪魔しないこと。当たり前を見直します。

当たり前の真ん中

高校時代の数学の先生
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