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慢性疼痛に対する鍼治療

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この文献の要約

臨床現場で広く使われているにもかかわらず、鍼治療は慢性疼痛の治療法として依然として議論の対象です。この文献では、広く統計データを集めることで、鍼治療の効果を示しています。この論文では2015年12月31日までに発表されたMEDLINEとCochrane Central Registry of Controlled Trialsからランダム化試験を検索しました。特定の筋骨格系の痛み、変形性関節症、慢性頭痛、肩の痛みに対する鍼治療と偽の鍼治療または鍼治療をしない対照群を比較した試験を含めています。試験の割り当て方法が適切であると確認できたものだけを対象とし、研究者から生データを取得し、分析しています。最終的に合計39件の試験から20,827人の患者データを収集しており、鍼治療は、すべての痛みの状態において偽の鍼治療や鍼治療をしない対照群よりも効果的であると結論付けています。
この、論文では特に上半身の筋骨格系に対する治療の効果が他の部位より高いと指摘している。
この論文で鍼治療が慢性疼痛に対して臨床的に有意で持続的な効果を持ち、プラセボ効果だけでは完全には説明できないとし、慢性疼痛を持つ患者に針治療を紹介することは妥当な選択肢と結論づけています。

私なりの感想

国籍が多岐にわたることと(アメリカ、オーストラリア、中国、ドイツ、イギリス)、実験目的がそれぞれ違うデータを集めていること。メタ分析は別施設から集めると効果が低くなる特徴があるもにも関わらず、鍼の効果が確認されていることが興味深い。データが20827人であること、試験の割り当て方法が適切であると確認できたものだけを対象としているところも論文として価値が高いと考えています。

この論文にもありますが、鍼治療は慢性痛に対する治療法として今でも論争の的になっています。その主な理由は、鍼治療が生物医学の枠外にある考え方に基づいているからです。伝統的な鍼治療は、経絡や気の流れといった、生理学的に説明できない概念を使います。多くの現代の鍼灸師はこれらの概念を使わなくなっていますが、特定の身体のポイントに鍼を刺すことでどのようにして長期的な痛みの軽減が起こるのか、という科学的なデータはまだ不十分です。鍼灸の調査で難しいのが、実際に鍼をする人の差だと考えます。単純に上手下手だけじゃなく、同じ合谷でもアメリカと中国で違う可能性もあります。それにも関わらず統計的に施術の前後で有意差があるのは、評価できると考えます。
この文献の一番いいところはデータ数だと考えます。日本での鍼灸の発表は圧倒的に症例発表が多いなか20000もデータを集めて発表するところだと思います。(どうせならこういう仕事に携わりたい)
海外の論文は量が圧倒的なことが多く、統計的な手順を踏んでいるため客観的に評価している点が素晴らしいと思います。翻訳が完全じゃないため、微妙なところまで追うことが出来ないのが残念だけれど、今後も続けたいと思います。

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