メニュー
カテゴリー

<EBMを活用した顎関節疾患の臨床>読んだ論文で注意すべきこと

今回参考にした文献はこちら

目次

この文献について

この文献では最初に良質なエビデンスを集めることが患者さんのために必要だとしています。そのために「risk of biasとは何かについて知る必要があるとしています。この文献にもあるが、自分から情報を収集する必要があります。

bias(バイアス)とは,結論や推論における系統誤差であり,結果や効果推定値における真実からの逸脱である。バイアスから生じるリスクを最小限にすることが大事としている。バイアスは常に生じている。

バイアスは次の6つ

  1. Selection bias(選択バイアス)
  2. Performance bias(実行バイアス)
  3. Detection bias(測定バイアス)
  4. Attrition bias(減少バイアス)
  5. Reporting bias(報告バイアス)
  6. Other bias(その他のバイアス)

Selection bias(選択バイアス)

選択バイアスは、治療介入前の研究参加者の群分けに関するバイアスです。これには「ランダム割り付け順番の生成」と「割り付けの隠蔽化」が含まれます。

  • ランダム割り付け順番の生成:交絡因子の均一性を保つため、封筒法、コイントス、コンピュータ生成のランダム表などの手法が用いられます。曜日やカルテ番号による割り付けはランダムとはみなされません。
  • 割り付けの隠蔽化:担当者にランダム割り付け表を隠すことで、次の参加者の割り付けが予測できないようにします。隠蔽化が不十分だと、予測可能な割り付けが発生し、結果的に背景因子が揃わなくなるリスクがあります。

Performance bias(実行バイアス)

実行バイアスは、マスキング(ブラインド)に関連するバイアスで、研究参加者と治療提供者が対象です。両者がマスキングされている場合を二重盲検といいます。

  • 研究参加者のマスキング:参加者が自分の割り付け群を知っていると、効果が期待される群では積極的に治療に参加し、対照群では治療への意欲が低下し中断する可能性があります。
  • 治療提供者のマスキング:提供者が担当群を知っていると、期待される新しい治療法の群に対してより丁寧な治療を行うなど、治療の提供に差が生じる可能性があります。

Detection bias(測定バイアス)

測定バイアスは、アウトカム評価者とデータ解析者に対するマスキングに関連するバイアスです。

  • アウトカム評価者のマスキング:評価者が評価対象の群を知っていると、測定値を過大または過小評価するリスクがあります。
  • データ解析者のマスキング:解析担当者が群を事前に知っていると、分析に影響が出る可能性があるため、すべてのデータ解析が終了した後にマスキングを解除することが望ましいとされています。

Attrition bias(減少バイアス)

減少バイアスは、研究参加者の脱落や治療中断に関連するバイアスです。参加者が脱落したり解析時に除外されると、群間で交絡因子に差が生じる可能性があり、結果の信頼性が低下します。参加者の減少を完全に防ぐことは困難ですが、適切な対応が重要です。一般的な対応方法としては、ITT(intention to treat)解析があります。

Reporting bias(報告バイアス)

報告バイアスは、論文中でアウトカムの結果をすべて記載しないことに関連するバイアスです。すべての結果が記載されていない場合、効果が出なかった不都合なアウトカムや害になるアウトカムが隠蔽されている可能性があります。

Other bias(その他のバイアス)

その他のバイアスは、前述のバイアス以外で効果推定値の信頼性に影響を与える可能性があるバイアスです。具体的には、研究参加者のベースラインの不一致、都合の良い結果による研究の早期中止、クロスオーバー試験における持ち越し効果などが含まれます。また、利益相反の申告や企業からの提供による影響も考慮する必要があります。

複数研究の risk of bias 評価

複数の研究のリスク・オブ・バイアス(risk of bias)評価では、必要な論文を十分に収集し、全体的なリスク・オブ・バイアスを評価することが重要です。個々の論文についてアウトカムごとにリスク・オブ・バイアスを評価し、最終的にアウトカムごとの全体的なリスク・オブ・バイアスを評価します。

私なりの感想

バイアスとは何かを聞かれたら、「早とちり」と返答していたと思います。しかし、調べるとバイアスは「偏見や先入観、思い込みなどからくる思考の偏りや認知の歪み」なのだそうです。バイアスという言葉の解像度が上がって良かった。この文献の中で一番近い言葉をセレクトするとしたら偏りかなと思います。グループを二つに分ける際にランダムに分けて、実験する人もどちらのグループか分からないようにやって、データ分析も分からない人がやって、その全てを報告するとしており厳しいです。挙句、減少したら信頼できないとあり、「いやいや、やめたくなるでしょ」とも思ました。聞いた話によると、完全な乱数表は作れないのだそうです。「臨床試験においてバイアスは常に生じている。」としているのも聞いてみてそうだよなと思いました。バイアスのリスクをいつも頭に入れておけ、その一言が一番の肝かと思いました。まとめにある「RCT であっても効果推定値の確信性が必ずしも高いとはいえないことを覚えておく必要がある。結果の数値だけに捉われず,それらの数値の確信性がどの程度なのかということを常に評価しながらエビデンスを吟味することを習慣づけることが大切であろう。」とあり、覚えておきます。

「人は見たい現実しか見ていない。人は自らの見たいもの、信じたいものを信じる」

カエサル
目次