ダニ媒介性脳炎
目次
はじめに
- ダニ媒介性脳炎は、フラビウイルス科フラビウイルス属に属するウイルスによって引き起こされる感染症です。
- 主にマダニの刺咬によって感染し、ヤギの生乳の飲用による経口感染も報告されています。
- 潜伏期間は2~28日で、通常は7~14日です。
- 症状は発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感などの非特異的な症状から始まり、重症化すると痙攣、麻痺、意識障害などの脳炎症状が現れます。
- 致死率は1~2%で、回復しても神経学的後遺症が10~20%に見られます。シベリア亜型では致死率が6~8%、極東亜型では20%以上に上ります。
- 予防には予防接種とダニの刺咬を避ける対策が重要です。
原因
- ダニ媒介性脳炎は、フラビウイルス科フラビウイルス属に属するウイルスによって引き起こされます。
- 主な感染経路は、ウイルスを保有するマダニの刺咬です。
- ヤギの生乳の飲用による経口感染も報告されています。
- ウイルスは主に極東亜型、シベリア亜型、ヨーロッパ亜型に分類されます。
症状
- 潜伏期間は2~28日で、通常は7~14日です。
- 初期症状は発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感などの非特異的な症状です。
- 重症化すると痙攣、麻痺、意識障害などの脳炎症状が現れます。
- ヨーロッパ亜型では二相性の経過をたどり、第一相はインフルエンザ様の症状、第二相は中枢神経系症状が現れます。
- 極東亜型では二相性の病状は呈さず、頭痛、発熱、悪心、嘔吐が見られ、精神錯乱、昏睡、痙攣、麻痺などの脳炎症状が出現します。
流行地域
- ダニ媒介性脳炎は、東部から中央ヨーロッパ、ロシア、中国北部までの広い地域で流行しています。
- 年間1万~1万5千例の感染があると推計されています。
- 日本では北海道での発生が確認されています。
- ヨーロッパ亜型のウイルスは中欧を中心にヨーロッパ諸国に分布しています。
- シベリア亜型のウイルスはシベリア、バルト三国、フィンランド等に分布しています。
- 極東亜型のウイルスは日本、中国、モンゴル、極東ロシアおよびシベリアで流行しています。
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予防
- 予防の中心は予防接種とダニの対策です。
- 予防接種は、初回免疫の場合、3回筋肉内に接種します。
- 2回目接種は1回目接種の1~3ヵ月後、3回目接種は2回目接種の5~12ヵ月後に行います。
- 必要に応じて3回目接種の3年後に追加免疫を行い、以降は5年ごとの追加免疫を行います。
- ダニの刺咬を避けるために、長袖・長ズボンを着用し、忌避剤を使用することが推奨されます。
- ヤギの生乳の喫飲は避けることが重要です。
治療
- ダニ媒介性脳炎の治療は対症療法が中心です。
- 特異的な抗ウイルス薬は存在しません。
- 重症例では入院治療が必要です。
- 脳炎症状が現れた場合、集中治療が行われることがあります。
- ステロイドや免疫グロブリンの使用は推奨されていません。
- 予防接種は曝露後の感染予防には推奨されていません。
対応策のまとめ
- ワクチン接種:
- 流行地域に旅行する場合やリスクの高い地域に住んでいる場合は、TBEワクチンの接種を検討する。
- ワクチンは数回の接種が必要で、追加接種も定期的に行う。
- ダニ対策:
- 森林や草原などダニが生息する場所に行く際には、長袖長ズボンを着用する。
- ダニ忌避剤(防虫スプレーなど)を使用する。
- 明るい色の服を着て、ダニが付着しているかどうかを確認しやすくする。
- 屋外活動後のチェック:
- 屋外活動後は全身をチェックし、ダニが付着していないか確認する。
- 髪の毛、耳の裏、膝の裏、脇の下など、ダニが隠れやすい場所を重点的に確認。
ダニに咬まれた場合の対応
- 早期発見と除去:
- ダニに咬まれた場合は、できるだけ早くダニを取り除く。
- ダニを除去する際は、ピンセットを使用して慎重に引き抜く。ダニの体を潰さないように注意。
- 咬まれた部位の消毒:
- ダニを除去した後、咬まれた部位を石鹸と水で洗い、消毒する。
- 症状の観察:
- ダニに咬まれた後、数週間は体調に注意し、発熱、頭痛、筋肉痛などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診する。
食品の摂取に関する注意
- 生乳の摂取を避ける:
- 流行地域では、生乳や生乳製品の摂取を避ける。
その他の注意事項
- 旅行先の情報収集:
- 流行地域に旅行する際は、現地のTBEのリスクを事前に調査し、適切な予防措置を講じる。
- 医療機関の利用:
- 症状が現れた場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診する。
これらのポイントを守ることで、ダニ媒介性脳炎のリスクを大幅に減少させることができます。安全なアウトドア活動を楽しむために、適切な予防策を講じることが重要です。