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アトピー性皮膚炎におけるサイトカインネットワーク

参考文献

https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/13/1/13_8/_article/-char/ja/

目次

ポイント

急性期の病変(参考文献より)

  • アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)の原因としては1 バリア機能異常 2免疫機能異常 と考えられている。
  • AD患者にバリア機能が低下していう患者が多いが原因はそれだけでは説明しきれない。
  • AD患者の20%はIgEが正常のため純粋なアレルギー疾患とは考えられない。
  • IgE高値の患者(外因性)とそれ以外の患者(内因性)を比較すると内因性の患者ではIL17とIL22が多い
  • 急性期と慢性期でヘルパーT細胞の割合が変化する。それに伴いサイトカインにも違いがある。
  • 急性期では、Th2、Th22、Th17が関与、慢性期では、Th2、Th22、Th1が関与する。
  • 急性期では掻破された皮膚からTSLP、IL25、IL33が分泌される。ILC2(2型自然リンパ球)が発生してTh2細胞からサイトカインが放出される。IL4はIgE発生を促してアトピー症状を引き起こす。IL31はかゆみを引き起こす。IL4とIL13は皮膚の表面で皮膚のバリア機能を弱める。
  • 慢性期では、Th22が増加する。IL22が増えることで、バリア機能が低下する。細菌感染の原因になりIL22が増える。このことから、アトピー治療の標的サイトカインなりうる可能性がある。
  • T regが作るTGF-βとILC2 が作るIL13 が皮膚のリモデリングを進める。
  • IL25はIL4、IL5、IL13などのTh2サイトカインを作りIgEを増加することでアレルギー反応を悪化させることが確認されている。皮膚バリアを弱める報告もあるが詳細は不明。
  • IL31は痒みを誘導するが機序は不明。ヒスタミンや細菌がIL31の発現を誘導するため、悪循環になっているとも考えられる。今後標的サイトカインになりうる。
  • TSLPは表皮細胞から作られる。Th2細胞の分化を促してIL4、IL13の産生に影響する。マウスを使った実験の結果からアレルギー症状に重要な因子であることが考えられるため、TSLPを抑えることが治療に重要だと考えられる。

自分なりの注目点


アトピー性皮膚炎がアレルギーの素因がない人でも発症するということをそもそも知らなかった。以前から鍼灸師としてサイトカインに興味があったが、いざ調べても初歩的すぎたり専門的すぎたりで理解が進まなかった。今回アトピー性皮膚炎を起点に複雑なサイトカインネットワークを知ることで理解が前進した。とはいえ、簡単にサイトカインとは何たるかを語るのは稚拙すぎると思われる。サイトカインは比較的新しい分野で不明な点も多いらしく、これからも勉強を続けるつもりだ。サイトカインを通してみるとアレルギーを見ることでアレルギーとサイトカインの両方の理解が深まると思われる。

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