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慢性的な痛みに対する取り組み

医療機関を受診する患者さんの主訴の多くは痛みです。

鍼灸の場合、頚から肩にかけての痛みと腰の痛みが多いのですが、その大半はギックリ腰に代表される急性痛ではなく、慢性疼痛と呼ばれる長期にわたって続いた痛みです。治療にあたる際に大事なのは、慢性疼痛は急性疼痛の延長ではないということです。しかし慢性疼痛についての説明は時間が必要なため、鍼灸師による患者さんへの説明が不十分なのが現実です。鍼灸治療を保険で受ける場合に認められている疾患は慢性病であることが前提であることを考えると、大変嘆かわしいと考えます。そこで、慢性疼痛について少しずつなるべく簡単に分かりやすくまとめたいと思います。
前提として、慢性痛の痛みは単なる生理的な反応とは考えられていません。痛みが継続する中で、患者さんの心理や生活などまで含めた問題になっていると考えられています。(生物医学モデルと生物心理社会モデル)そのため、慢性疼痛の治療については、痛みの原因を取り除いても痛みはなくならないという仮説が現在の標準になっています(慢性疼痛治療ガイドライン)。痛みの原因を取り除くことに集中する急性疼痛の治療と大きく違います。そのため、実際に痛みに苦しんでいる患者さんに説明して理解してもらうには長い時間が必要だと感じています。

次に慢性疼痛に対して鍼灸師に何が出来るかについてですが、鍼灸師に限らず慢性疼痛に対して一人の人間が出来ることは限定的です。そのため、様々な専門職が多方面からサポートするのが望ましいし(集学的治療)本人も主体的に取り組むことが大事だと言われています。それだけ、慢性疼痛は複雑で広範囲な現象です。私は医療従事者を名乗るものが拙い知識で患者さんを混乱させて痛みをこじらせるようなことはあってはいけないと考えます。
「痛いから出来ない」から「痛いけどこれはできる」と変わることは、患者さんにとって簡単じゃないと思いますが、比較的長い時間を患者さんと共有する鍼灸師にしか出来ないことがあると思います。患者さんが主体的に痛みと向き合い、より豊かな人生を送るお手伝いをしたいと思ってます。

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