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インターロイキン6

インターロイキン6について、分かりやすくまとめてある文献を見つけたので、要約します。

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インターロイキン6とは

Interleukin-6(IL-6)は、もともと1986年にB細胞を活性化し、抗体を生成する役割を持つサイトカイン(免疫系のメッセンジャー物質)として見つかりました。その後の研究で、IL-6にはさまざまな生物学的機能があり、炎症の中で重要な役割を果たしていることがわかってきました。特に関節リウマチ(RA)では、IL-6が患者の血液や関節の滑液中に高い濃度で存在し、その量が病気の活発さと関連しています。関節リウマチにおいて見られる様々な症状(急性反応のタンパク質の増加、関節の炎症や破壊、貧血など)は、IL-6の影響によると考えられています。

インターロイキンの主な役割


1急性期反応(APR)

感染や外傷等で炎症によって引き起こされる際は、病原体を無害化して侵入を防ぎます。IL-6は発熱を引き起こす重要な因子で、炎症反応や免疫応答に深く関与しています。しかし、一方でリウマチなどの慢性炎症で引き起こされるAAアミロイドーシスはIL-6を阻害することで劇的に改善されると言われています。

2血管新生
血管新生は体の修復と炎症の両方に不可欠なプロセスですが、たくさんの成長因子やサイトカインが血管新生に関与しています。IL-6もその一つです。例えば関節リウマチ(RA)の患者さんでは、滑膜に新しい血管が形成されることで炎症細胞が浸潤し、滑膜細胞が過剰に増殖されて症状が悪化します。関節リウマチにおいてIL-6は血管新生に重要な役割をしているため、IL6を抑制する薬で関節リウマチの炎症を抑えることが出来ます。

3好中球とIL6
好中球は、私たちの免疫システムの最前線に立つ細胞です。IL-6は、炎症反応を調節するために体が自然に産生する物質ですが、好中球はIL-6のシグナルを受け取るための受容体、IL-6Rを持っています。しかし、最新の研究によると、IL-6は好中球の感染防御に関わる多くの機能には直接的な影響を及ぼさないとされています。
好中球が炎症部位に遊走する際には、接着分子やケモカインが不可欠です。IL-6は、炎症部位や内皮細胞における接着分子(VCAM-1、ICAM-1など)の発現を増強し、さまざまな細胞からのケモカイン(CXCL8/IL-8、CCL2/MCP-1、CCL8/MCP-3)の産生を促します。これにより、好中球は炎症部位へと正確に誘導されます。IL-6阻害により,炎症部位への好中球の遊走が減少したという報告もあります。


4免疫とIL6
IL-6は免疫システムの中で多岐にわたる役割を担っています。元々はB細胞が抗体を作る手助けをする因子として発見されましたが、B細胞だけでなく、T細胞の活動にも影響します。
IL-6はB細胞がIgM、IgG、IgAといった抗体を増やすのを助けることが知られています。IL-6の量が多すぎると、視神経脊髄炎(NMO)という病気に関連する特定のB細胞が過剰に増えてしまうことがあるため、IL-6をブロックする治療法がNMOの治療に有効であることが示されています。
IL6は、T細胞の中でもB細胞をサポートする役割を持つCD4+ T細胞の機能を高めることで、抗体の生産をさらに促進します。具体例にTh2細胞の分化を促進してTh1細胞の分化を抑制します。Th17細胞の分化は促進します。IL-6は免疫系の均衡を保つTreg細胞の機能を抑制することも知られており、この特性が自己免疫疾患の治療においてIL-6の阻害を有効な戦略にしています。これらについては、全ての機序が確認はいないらしく、違う結論の報告もあるようだが、IL-6の働きを抑える薬を使うことで確認が取れているようです。IL-6の働きは免疫応答に重要なため、その研究はさまざまな病気に対する治療法の開発に貢献する可能性を秘めています。そのため、IL-6の働きを理解し、制御することは医学研究において重要な焦点となっています。

5骨代謝
骨は、とても活動的な器官で、骨を壊す細胞(破骨細胞)と骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きによって、常に新しく生まれ変わっています。健康な体では、破骨細胞と骨芽細胞の両方がうまくバランスを保ちながら行われ、適切な骨の量を維持しています。IL-6はリウマチ患者のRANKLの産生を促し、その結果、骨を壊す細胞が活性化され、骨がもろくなります。(IL-6は破骨細胞に対して促進する作用と抑制する作用の両方があることが示唆されています。)

6軟骨障害
軟骨代謝が妨げられると軟骨の形成にが遅れるため子どもの身長の伸びが遅れる原因となります。これらの成長障がいにはIL6が関係することがあります。

まとめ

IL-6は、免疫反応、造血、急性期反応など様々な生物学的プロセスに関与する重要な分子です。しかし一方でIL-6の過剰産生は一部の慢性炎症性疾患やがんなど、多くの疾患の発症につながることも示唆されています。このため、IL-6の働きを理解することや研究することが重要です。一般的に炎症性サイトカインとして知られるIL-6は、場合によっては抗炎症性サイトカインとして働くこともあるため、今後も最新動向が注目されると考えます。いずれにしても疲労、ストレスが体調を崩すトリガーになることはIL-6からの多様性からも言えると考えています。

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